自動詞と他動詞って何? ~文法~ | カンヴァス~徒然国語日記~

2015年8月7日金曜日

自動詞と他動詞って何? ~文法~

 動詞には、自動詞と他動詞が存在します。

 「英文法を学習するときに習った気がする……」という方も多いのでは?

 普通に使いこなせてしまうため、なかなか意識することは少ないかもしれませんが、自動詞と他動詞の区別は、日本語にもちゃんと存在しています。

 日本語だろうと英語だろうと、文法を考えるにおいて、自動詞と他動詞の区別はたいへん重要です。

 「自動詞と他動詞ってなんだっけ?」と思っているそこのあなた!
 ここで改めてもう一度、しっかり確認しておきませんか?



自動詞と他動詞って何?

基本的な見分け方を一言で言ってしまうと、目的語を必要とするのが他動詞、必要としないのが自動詞です。

 辞書では次のように記されています。

  • 自動詞
    • 他に作用を及ぼす意味を持たない動詞。目的語がなくても意味が完結する。「走る」や「咲く」の類。
  • 他動詞
    • ある客体に作用を及ぼす意味を持つ動詞。目的語がないと意味が完結しない。日本語では、目的語として多く助動詞「を」を添えて表す。「本を読む」の「読む」の類。

(『広辞苑 第五版』 岩波書店、1998より)


 これだけ見ても分かりづらいので、まずは例文を使って考えましょう。

   火が消える
   私が火消す

 「消える/消す」と言う動詞は、どちらも同じような内容を示しています。


 「火が消える」では、主語は「火」、動詞は「消える」です。
 ここで、火は誰かによって消されたわけではありません
 また、火が他の何かに影響を及ぼしているわけでもありません。

 この文では、「火」が「消える」という単純な出来事、主語と述語の関係を示しているだけです。
 したがって、「消える」は他に働きかけない(=目的語を必要としない)、自動詞であるということができます。


 一方、「私が火を消す」という例文では、主語は「私」、動詞は「消す」、目的語が「火」になっています。
 ここで、主語の「私」が、水を掛けたり消火器をぶっ放すなど、何らかの働きかけをすることで、目的語「火」を「消し」ていることが分かります。

 「消す」は消される対象(ここでは「火」)が前提とされている動詞ですので、目的語が必要となります。したがって、「消す」は他動詞であるということができるわけです。



要注意!~識別しづらい他動詞/自動詞~
 上記の例でお分かりかと思いますが、日本語だと動詞に「~が」「~を」をつけて確かめることにより、大抵は簡単に識別できます。

  • 「咲く」→「花が咲く」と言う文がつくれるから、自動詞
  • 「読む」→「私が本読む」と言う文がつくれるから、他動詞
という感じですね。

 しかし、少しだけ注意が必要な場合があります。

自動詞・他動詞の両方にあてはまる場合

 例として、「吹く」という動詞について考えてみましょう。
  • 風が吹く
  • 私が笛を吹く
というように、二種類の例文ができてしまいます。

   「『風が吹く』なら自動詞だし、『笛を吹く』なら他動詞だし……どっちが正解?」

 これ、実はどちらも正解です。

 「風が吹く」の場合は、他に働きかけがない(=目的語が不要)であるから、自動詞です。
 一方、「私が笛を吹く」の場合は、主語の「私」が目的語「笛」に対し、「吹く」という働きかけを行っているため、他動詞であるということができます。
 このように、使用法によって、自動詞として捉えるか、他動詞として捉えるかが変化してしまう場合があるんです。

 他にも、「引く(例:水が引く、綱を引く)」や「運ぶ(例:ことが運ぶ、荷物を運ぶ)」などがありますね。


 実は、英語の動詞は、ほとんどがこの「自動詞・他動詞両方に当てはまる」パターン。

 動詞中心的とも呼べる、英文法。
 英文解釈のコツは、使用されている動詞が、自動詞か他動詞かを的確に見分けることにあります。



「~を」がついてるのに……自動詞?

 さて、次はこんな例文を見てみましょう。
  • 空を飛ぶ
 ここで使用されている動詞「飛ぶ」は、自動詞でしょうか、他動詞でしょうか?

   「『~を』がついてるから目的語がある! 他動詞だ!」

 と言いたいところですが、よく思い出してみてください。
 他動詞の原義は、「ある客体に作用を及ぼす意味を持つ動詞」でした。

 しかし、ここでの「飛ぶ」は、「空」に働きかけてはいません。
 「空」は「飛ぶ」という動作が行われている場所を指しているに過ぎないのです。

 したがって、一見、他動詞に見えてしまう「飛ぶ」が、実は自動詞であることが分かります。

 実際、「鳥が飛ぶ」というような目的語をもたない文で完結できます。




 今回は日本語の文法における自動詞・他動詞を中心に解説しました。
 この内容は英語においても通じます。

 英語だと、自動詞・他動詞の区別が、日本語以上に重要な意味の違いを生みます。

 日本語に限らず、ことばを勉強したいときには、自動詞・他動詞を意識してみると理解が深まると思いますよ!