「英文法を学習するときに習った気がする……」という方も多いのでは?
普通に使いこなせてしまうため、なかなか意識することは少ないかもしれませんが、自動詞と他動詞の区別は、日本語にもちゃんと存在しています。
日本語だろうと英語だろうと、文法を考えるにおいて、自動詞と他動詞の区別はたいへん重要です。
「自動詞と他動詞ってなんだっけ?」と思っているそこのあなた!
ここで改めてもう一度、しっかり確認しておきませんか?
自動詞と他動詞って何?
基本的な見分け方を一言で言ってしまうと、目的語を必要とするのが他動詞、必要としないのが自動詞です。辞書では次のように記されています。
- 自動詞
- 他に作用を及ぼす意味を持たない動詞。目的語がなくても意味が完結する。「走る」や「咲く」の類。
- 他動詞
- ある客体に作用を及ぼす意味を持つ動詞。目的語がないと意味が完結しない。日本語では、目的語として多く助動詞「を」を添えて表す。「本を読む」の「読む」の類。
(『広辞苑 第五版』 岩波書店、1998より)
これだけ見ても分かりづらいので、まずは例文を使って考えましょう。
火が消える。
私が火を消す。
「消える/消す」と言う動詞は、どちらも同じような内容を示しています。
「火が消える」では、主語は「火」、動詞は「消える」です。
ここで、火は誰かによって消されたわけではありません。
また、火が他の何かに影響を及ぼしているわけでもありません。
この文では、「火」が「消える」という単純な出来事、主語と述語の関係を示しているだけです。
したがって、「消える」は他に働きかけない(=目的語を必要としない)、自動詞であるということができます。
一方、「私が火を消す」という例文では、主語は「私」、動詞は「消す」、目的語が「火」になっています。
ここで、主語の「私」が、水を掛けたり消火器をぶっ放すなど、何らかの働きかけをすることで、目的語「火」を「消し」ていることが分かります。
「消す」は消される対象(ここでは「火」)が前提とされている動詞ですので、目的語が必要となります。したがって、「消す」は他動詞であるということができるわけです。
要注意!~識別しづらい他動詞/自動詞~
上記の例でお分かりかと思いますが、日本語だと動詞に「~が」「~を」をつけて確かめることにより、大抵は簡単に識別できます。
- 「咲く」→「花が咲く」と言う文がつくれるから、自動詞!
- 「読む」→「私が本を読む」と言う文がつくれるから、他動詞!
という感じですね。
しかし、少しだけ注意が必要な場合があります。
自動詞・他動詞の両方にあてはまる場合
例として、「吹く」という動詞について考えてみましょう。
- 風が吹く
- 私が笛を吹く
というように、二種類の例文ができてしまいます。
「『風が吹く』なら自動詞だし、『笛を吹く』なら他動詞だし……どっちが正解?」
これ、実はどちらも正解です。
「風が吹く」の場合は、他に働きかけがない(=目的語が不要)であるから、自動詞です。
一方、「私が笛を吹く」の場合は、主語の「私」が目的語「笛」に対し、「吹く」という働きかけを行っているため、他動詞であるということができます。
このように、使用法によって、自動詞として捉えるか、他動詞として捉えるかが変化してしまう場合があるんです。
他にも、「引く(例:水が引く、綱を引く)」や「運ぶ(例:ことが運ぶ、荷物を運ぶ)」などがありますね。
実は、英語の動詞は、ほとんどがこの「自動詞・他動詞両方に当てはまる」パターン。
動詞中心的とも呼べる、英文法。
英文解釈のコツは、使用されている動詞が、自動詞か他動詞かを的確に見分けることにあります。
「~を」がついてるのに……自動詞?
さて、次はこんな例文を見てみましょう。
- 空を飛ぶ
ここで使用されている動詞「飛ぶ」は、自動詞でしょうか、他動詞でしょうか?
「『~を』がついてるから目的語がある! 他動詞だ!」
と言いたいところですが、よく思い出してみてください。
他動詞の原義は、「ある客体に作用を及ぼす意味を持つ動詞」でした。
しかし、ここでの「飛ぶ」は、「空」に働きかけてはいません。
「空」は「飛ぶ」という動作が行われている場所を指しているに過ぎないのです。
したがって、一見、他動詞に見えてしまう「飛ぶ」が、実は自動詞であることが分かります。
実際、「鳥が飛ぶ」というような目的語をもたない文で完結できます。
今回は日本語の文法における自動詞・他動詞を中心に解説しました。
この内容は英語においても通じます。
英語だと、自動詞・他動詞の区別が、日本語以上に重要な意味の違いを生みます。
日本語に限らず、ことばを勉強したいときには、自動詞・他動詞を意識してみると理解が深まると思いますよ!