みなさんも、普段、こんな日本語を耳にしたり、あるいは使っていたりしませんか?
「これ、食べれますか?」
「この本、図書館で借りれるよ」
本日は、そんな「ら」が抜け落ちてしまった、いわゆる「ら抜きことば」がどうしてできてしまうのか、ということを少し考察したいと思います!
さて、上で挙げた会話の例。
正しく変化させるなら、
正しく変化させるなら、
「これ、食べれますか?」 → 「これ、食べられますか?」
「この本、図書館で借りれるよ」 → 「この本、図書館で借りられるよ」
とする必要があるわけです。
このように、「~できる」という可能の意味を表すとき、語中の「ら」を抜かしてしまうことがあります。
「ら」が抜け落ちてしまったことばのことを、「ら抜きことば」と呼びます。
そのまんまですね。
そのまんまですね。
この「ら抜きことば」、言葉の使い方としては「誤用」とされますが、実際、みなさんもついつい使ってしまうことってありますよね?
私はあります(笑)。
これも以前紹介しました「全然+肯定」と同じく、少し前までは「日本語の乱れだ!」と叩かれまくっていましたが、最近ではそんな指摘もあまり耳にしなくなりました。
「ら抜きことば」が私たちの生活になじんできている証拠でしょう。
いずれ、「ら抜きことば」が「正しい日本語」になる日がくるかもしれません。
そうはいっても、今のところ「ら抜きことば」は「誤用」であると言えます。
ただし! 「ら抜きことば」をただの誤用として切り捨ててしまうことはできません。
ただし! 「ら抜きことば」をただの誤用として切り捨ててしまうことはできません。
実はコレ、きちんとしたルールに基づいて変化した形だと言えるんですね。
そもそも、なぜ「ら抜き」の形に変化してしまうのか?
変化の原因はズバリ、可能形と受身形が動詞によって不統一であることにあります!
う~ん……これだけではさっぱり分からない。
というわけで、「話す」「読む」という語を例にとって考えてみましょう。
一般に、「話す」を
- 可能の形に変えると、「話せる」
- 受身の形に変えると、「話される」
となります。
同様に、「読む」について考えてみると、
- 可能形は「読める」。
- 受身形は「読まれる」
です。
このように、「話す」や「読む」という動詞の可能の形と受身の形は異なると言えます。
それでは、ら抜きことばになってしまう「食べる」と「借りる」を考えてみましょう。
- 「食べる」の可能形は「食べられる」。
- 「食べる」の受身形は「食べられる」。
- 「借りる」の可能形は「借りられる」。
- 「借りる」の受身形は「借りられる」。
お分かりかと思いますが、ここでは可能形と受身形の形が同一になっています。
このように、可能と受身を表す動詞の形は、その動詞の種類によって異なるわけです。
しかし、このままだと動詞ごとに変化の仕方が異なっていて、統一性がない。
その上、可能形と受身形の区別がつきにくい……!
それらの問題点を解消するために生み出されたのが、何を隠そう「ラ抜きことば」です!
「『食べる』の可能形を『食べられる』にしちゃうと、受身形と一緒になっちゃうから、分かりづらいなあ……。動詞によって変化の仕方が違うのもややこしいし。
そうだ! 『食べる』を、『話す』とか他の動詞と同じように変化させちゃえばいいんだ!」
と、無意識のうちに考えた私たちの脳が、ラ抜きことばを生み出しました。
もうちょっと詳しく見ていきましょう。
「話す」、「読む」などの「ら抜きことばにならない動詞」は、
「話す」、「読む」などの「ら抜きことばにならない動詞」は、
- 「話す [hanasu]」→「話せる [hanaseru]」
- 「読む [yomu]」 →「読める [yomeru]」
というように、最後のウ段音[~u]をエ段音[~e]に変え、「る[ru]」をつけることで、可能の形を作り出しています。
これを、「食べる」「借りる」に適用すると……
- 「食べる[taberu]」→「食べれる[tabereru]」
- 「借りる[kariru]」→「借りれる[karireru]」
となりますよね。
はい! これで、「ら抜き言葉」の完成です!
このように、誤用だとされることばの使い方も、実は理論だった文法の変化に基づいていることがあるわけですね。
そんな文法的には自然な「ら抜きことば」。何度も書いているように、誤用は誤用。
テストで書くと当然バツを貰いますし、話し言葉はともかく、書き言葉で用いると違和感を抱く人も多いはずです。
以前の記事でも書きましたが、言葉は受け取る相手のことを考えて用いる必要があります。
「ら抜きことば」をいちいち「日本語の乱れだ!」と目くじらを立てて訂正するのはどうかと思いますが、時と場合によっては、「ら抜きことばではない正しい使い方」をしっかりと使う必要がある、ということもしっかり心にとめておきましょう!